第4章 怒りの裏返し
「ちょっと待って、別れるって何?」
「疲れてん」
「疲れたって……」
「もうとは離れる」
「離れるってなに、一方的決めんな!」
「自分かて一方的に決めとるやん!」
「あれは仕事じゃん!龍太郎と筒井さんとで話しあって決めたんだよ!」
「んんんーーー!知らん知らん知らん知らん知らん知らんあああああん!」
「簓さんだって、俺のこと本気で好きなのかよ!どうせ俺のこともネタにしたくて付き合ってんだろ!!」
「なんやねんネタて!」
「あ、わかった。嫉妬してるんだ。俺が先にトウキョウ進出したこと羨ましいんだ!俺の方が才能あったのかもなーーー!!!」
「なんやとぉぉ!?」
「んだよ!!」
「もうお前の顔なんか見とおないわ!!」
「ああそうかよ!勝手にトウキョウ行くからな!!」
「行け行け!帰ってくんな!!」
ヒートアップした俺達は無我夢中で叫び続けた。
しかし、隣人による激しい壁ドンでビクリと俺達は我に返った。
静まり返った部屋には冷蔵庫の稼働する音だけが妙に聞こえている。
「帰るわ」
簓さんを目で追うこともせず、玄関が閉まる音で出ていったのを確認した。
ただただぽつりと立ち尽くす。
伝えなかった俺が悪い、そんなのわかってる。
でも別れると言われてショックだった。
簓さんより才能があるわけないじゃん……そんなの本気で思ってない。
ハハハ、何も心配すること無くなった。
トウキョウに行って売れるだけ、もうそれだけ考えてればいいや。
俺なんで芸人になろうと思ったんだっけ。