第8章 もう一度
かかしサイド
今日は任務も早く終わり帰宅する。
この暗い部屋に帰ってくることも、もう慣れたものだ。
こんな日は、久々にゆっくりと読書を…と思いごろんとベッドに横になった。
でもなんとなく集中できず、パタンと本を閉じてぼんやりと天井を見つめていた。
自身の手をかざして、眺めてみる。
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『この手は汚れてるんじゃない。この手は、里を、人々を、大切な人達を守るために頑張ってくれてるんでしょ?この手を、自分自身を嫌いにならないで』
アンナの言葉がまた蘇った。
あの言葉には救われた…
だからこうして今も頑張ることができているのだ。
『かかしが生きている実感が欲しいなら、私が感じさせてあげるから、これからは、ここに、私の隣にちゃんと帰ってきてくれる?』
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はぁ~…っと重く長い溜息が部屋に浮かび上がる。
両手で顔を覆い
「俺は…そろそろ限界だよ…」
情けないと思いながらも、久々に本心が口からでた。
その瞬間、ドサッと体に柔らかい重みがのしかかった。
一瞬でわかった。
「…かかし…」
ずっとずっと聞きたかった声、彼女の匂いと体温。
一瞬で胸がいっぱいになり、無言で力いっぱい抱きしめた。
ようやくその愛しい人を見つめた時、彼女は泣きながらも笑って言ってくれた。
「こんなとこにいたんだ…やっと見つけたよ」