第14章 逢瀬
「明日なんだが、伊黒と甘露寺と出かけないか?」
朝食を食べ終え、仕事への支度をしていると杏寿郎から嬉しい報せが舞い込んできた。
「行きたいです!嬉しい!」
「うむ!」
昔の様に甘味を食べに行くとの事で、より嬉しくなった。
「昔もよく4人で行きましたね」
「そうだったな!
甘味を食べに行くのも久しぶりだ!」
「また蜜璃と2人でお皿の山を作るんでしょうね」
昔を思い出しふふっと笑う。
気持ちの良い食べっぷりの2人とそんな2人(主に蜜璃)を見る専門の伊黒と至って普通量の。
なのでは大抵一品しか注文しないので、メニューの豊富な店ではどれを食べようか迷ってしまう事もあった。
そんな時はいつも杏寿郎が色んなものを注文して、お裾分けしてくれていた。
こういう事をサラッとやってしまう杏寿郎に心奪われない訳がない。
途端に胸がキュンとときめき、鏡に向かってネクタイを締めている杏寿郎の背中に思わず抱きついてしまった。
「よもや!」
「あっ!ご、ごめんなさいっ、ん!」
驚いている杏寿郎に慌てて謝るも、すぐに後頭部を抑えられ唇を塞がれてしまう。
「っふ、ん…」
「…チュッ…朝から愛いことをしてくれるな…仕事に行けなくなってしまう」
これから仕事とは思えない濃厚なキスに腰が砕けてしまいそうになる。
「仕掛けたのはだ。
今夜眠れると思うなよ?」
色気漂う夜の顔でニヤリと笑いかけてくる杏寿郎に顔が赤くなってしまう。
(その顔は反則っ!)
「さあ!行こう!」
あっという間にいつもの杏寿郎に戻り、手を引かれ2人で玄関に向かう。