第12章 変わらぬ想い
邸に着き、愕然とする父と弟を横切りの部屋へ向かった。
「はわたしが預かります。
煉獄さんは早く湯浴みを」
働かない頭にしのぶの言葉を言い聞かせ、途方に暮れたまま湯浴みをし、気がつけばしのぶに綺麗にされ寝かされたの前に座っていた。
顔の汚れを落とされ、見慣れた浴衣で寝かされたその姿は、ただただ眠っているだけにしか見えなかった。
だが、頬に手をあてると生きた人間ではないことを実感させられた。
「御館様にはわたしから伝えます。
今日は1日の傍に居てあげて下さい。
ただし、煉獄さん。
あなたは鬼殺隊の炎柱・煉獄 杏寿郎という事をお忘れなきよう。
もそう言っている筈ですよ」
炎柱・煉獄杏寿郎…
"師範!"
"今日はさつまいもご飯ですよ!"
"わたしは炎柱の継子 です!"
"わっしょいわっしょい!"
"杏寿郎さん、お慕いしております"
走馬灯の様にとの思い出が駆け巡る。
が慕ってくれていたのはこんな俺ではない。
去って行くしのぶの背に向かい、先程の杏寿郎とは思えぬ芯のある声で告げる。
「…胡蝶、いつもと変わらず綺麗なままのにしてくれてありがとう」
それに気づき足を止めたしのぶの目から、耐えていた涙が零れた。
「それでこその愛した煉獄さんですよ」
♢
昔の事を思い出しているうちに瞼が重くなってくる。
この話は内緒だな、と自分の胸に秘める。
胡蝶がバラさなければ。
を抱き寄せ、明日は存分に甘やかそうと決め眠りにつく。