第12章 変わらぬ想い
いつも以上に互いを求め、幾度となく果て、が気を失った所で濃密な時間は終わりを迎えた。
の頬に残った涙の跡を拭い、その寝顔を見つめる。
杏寿郎さん、杏寿郎さん、と何度も言っていた唇からは小さな寝息しか聞こえない。
夕食時など家族と過ごしていた時には隠していた様だが、杏寿郎の死に目の話に酷くショックを受けた様で、2人になった途端感情が溢れ出し、熱に浮かされたかの様に涙を流しながら杏寿郎を求め続けた。
「取り乱したのはだけじゃないぞ?」
♢
が死んだあの時、杏寿郎はを抱き締め涙を流し続けた。
駆け付けたしのぶが動揺する程に。
柱になり、どれだけの人を助けても、最愛の人を守れなかった。
"おまえも大した才能はない"
父の言葉が重く伸し掛る。
「を血塗れのままにしておくつもりですか?」
微動だにしない杏寿郎の傍らでの死を確認していたしのぶに叱責され、力なく立ち上がりを抱いて邸へ連れていく。
「街の人が驚きます。
夜明け前に早く」
から出たおびただしい量の血が杏寿郎をも血塗れにしており、ただ事では無いことを物語っていた。
移動している間にもの体温は下がっていき、杏寿郎の生気もどんどん失っていった。