第1章 夢
幼い頃より頻繁に見る夢。
まず最初に、炎を象ったマントの様なものを靡かせた人の後ろ姿が出てくる。
次に、その人が剣を振るい、何かと戦っている姿。
最後に、自分の目線から判断すると、横たわるわたし自身を抱きしめ、何か言葉を紡ぐその人の口元。
ここでいつも目が覚める。
必ず涙を流しながら。
その人顔は見たことがない。
覚えているのは太陽のように輝く橙と金の髪。
ただ涙を流しながらも幸せな気持ちで目覚めるので、本当に不思議な夢だった。
余りにも同じ夢を見るので、両親に相談した事もあったが、時間が経つにつれ、怖い事も無かったので特に悩みもしなくなっていった。
しかし、ここ最近その夢に変化が起きてきた。
まず音。
いつも無音だったのに、その人の声がうっすらと、から、だんだんはっきりと聞こえ始めた。
その耳に心地の良い通る声が、なんとかの型、とかなんとかの呼吸とか、溌剌としゃべっている。
その次に感情。
その溌剌とした姿を見ると、胸がドキドキして暖かくなる。
それを感じた夢から目が覚めた時、夢の中のわたしはこの人に恋しているんだな、とすぐに理解した。
ただ、それは最後のシーンだけでは発動しなかった。
最後こそ、その口から何が紡がれているのか知りたいのに。
またこの夢に変化が訪れる時は来るのだろうか…