第3章 記憶
「みんな、おはよう。
今日から一緒に働く事になった先生だよ。
みんないろいろ教えてあげておくれ。」
「です。
英語を担当させていただきます。」
宜しくお願いいたします、とお辞儀をすると、顔を上げなくても何人かが息を飲むのがわかった。
みな拍手で迎えてくれるものの、おそらく息を飲んだであろう数名…
パーカーのフードを被った派手な人や、白髪で顔に傷のある人。
白黒のストライプのシャツに白衣を着た人に、ジャージに無表情の人たちが目配せで会話をしている気がして、とても居心地が悪かった。
「彼女に学校を案内してもらいたいんだが…おや?煉獄先生は居ないのかな?」
「煉獄先生は今朝は部活動の会合で少し遅れていらっしゃるそうです」
蝶の髪飾りをした綺麗な先生が答える。
その瞬間、2人の会話で出た名前が頭に響く。
(れんごく?………)
「そうかい。
では、来たらわたしの部屋へと伝えておくれ。
さ、先生…
?」
「れ、んご…く…?」
煉獄…きょう…じゅ…「あの、理事長!…煉獄には…」
先程のパーカーの先生の大声で、『煉獄』という名前に囚われていた意識を戻す。
「宇髄先生、『まだ』だよ」
「! 御意」
なにか含みを持たせた言い方に宇髄先生はハッとしたようだったが、未だ『煉獄』が気になって仕方なかったわたしはその様子に気づかなかった。