第5章 触れそこねた指先
あの女がマネージャーになった。
嫌々だった割には、楽しそうにしてやがる。
こいつといるのは落ち着く。
うるさくねーし、バスケもできる。
全部言わなくても、オレの考えが伝わる。
「ちょっと、流川。」
「…なんすか?」
「あんた、最近楽しそうじゃない。」
こっちマネージャーは苦手だ…。
ある意味、オレの気持ちを見抜く。
「ちゃんが来てからよねー。」
「……。」
「あんなに必死になってマネージャーをやれって言うんですものねー。」
「………。」
「嬉しいわよねー。んふふー。」
………苦手だ…。
はすぐに他の部員とも仲良くなった。
前から体育館によく顔を出していたのもある。
そして、あいつ自身の性格と頑張りもある。
「ちゃん、よく働くなぁ。」
「そうだな。」
「桜木も騒がなくなったし、流川も機嫌がいい。赤木も少しは楽になったか?」
「まぁな。」
容姿もそれなりにいいから、モテる。
「はマジですげぇよ。バスケもうまいし、アドバイスも的確だし。何より、かわいいっ!」
「いや、彩ちゃんの方がサイコーさ。でもちゃんもすごい。」
なんとなく、ムカツク。どあほうどもめ…。
度肝を抜かれるようなオレンジの髪。
真っ白な素肌。
「おい、。ドリンク…。」
「あぁ、ちょっと待て。…ほらよ。」
自分に向けられたドリンクを持つ指先。
女に触れてみたいと思ったのは、初めてだ。
「おぉ。」
あと少しで触れられる。
そう思った。
「おーい、ちゃーんっ!!」
「はーい。わりぃ、投げるぞ。」
ぽいっと放られた、ドリンクボトル。
は三井に呼ばれて慌てて行った。
クソ…。
あと少しで触れたのに……。
「残念だったわね、る・か・わっ。」
「……。」
楽しんでやがる…。
やっぱり苦手だ…。
触れそこねた指先
ほんの一瞬でも触れてみたいと思う。