第8章 虚しさと苦悩
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誰かの気配を感じて目線をあげると、かかし先生が牢屋の前に立っていた。
なんだか久々に見た気がするな…
何も言わずにみていると、先生が話し始めた。
「…ある程度の情報は聞かせてもらったよ。
俺は、りか自身に脅威があるとは思えない。
もちろんそれはシカマルも同意見だし、俺たちはここから出してやりたいと思ってる。
だが、テンの存在がはっきりとしない。
りか自身も、テンについてはよくわからないだろ?」
私はうつむきながら、ポツポツと語りだした。
「はい…テンは私にも多くは語りません。
本当に必要最低限だけ。
でも私が落ち込んだときによく来てくれるから、テンは口は悪いけど、やさしいです。
さっきも、来てくれて、大人しくしててやるって…
何かあったら呼べって言って「本当に優しいなら、なんでテンはお前の命を条件にしたんだ?!」
その言葉に、バッと顔をあげた。
かかし先生は今にも泣きだしそうな複雑な表情だった。
先生はわかっている。
たったあと半年で、この状況下で、火影である立場で、先生が私を女として好きになることがないことを。
私の命を救えないことを。
でも仲間として私を思ってくれるから、今こんなにも感情的になってくれているのだ。
涙が止まらなかった。
「かかし先生…苦しめて…ごめんなさい…」
それしか言えなかった。
先生は、涙を落とす前にぬぐって、去っていった。