第9章 狩りに最適な日
暗闇の通路を、懐中電灯照らしながら歩く狡噛とその後ろを裸足でついていく船原。
しばらく歩いていると、台の上に乗せられた大きな鞄が見える。狡噛は鞄に近づいてチャックをジーッと開いた。
「それは……?」
船原が、狡噛が手に持っている青色の棒状のものに目を移して言う。
「………ケミカルライトだ」
と、鞄の中に明かりを照らして言った狡噛は、持っていたそのケミカルライトを折り曲げて先の道へと投げた。
「……普通のライトの方が良くない?」
今まで手にしていた懐中電灯を中にしまって鞄ごと担いだ狡噛は歩き始める。
「光源を手に持っていれば、闇の中では格好の的だ。それに、一度通った道の目印にもなる」
ライトが落ちている地点までたどり着き、先ほどと同じように新しいライトを折り曲げて先へ投げた狡噛。
「……朱って、こんな危険な仕事を?」
壁に沿って歩いている狡噛に船原が尋ねた。
「ここ最近は特に酷いな」
「……もっと真剣に相談に乗ってあげればよかった……」
と、毎回からかうようにして朱に話しかけていた船原は顔を暗くさせた。
「公安局の人間だ。仕事の詳細は、民間人には話せない」
「朱……、職場では上手くやってるの?」
「あいつは———」
狡噛は語る。
「———信念を持っている。刑事(デカ)ってのは、どういう仕事なのか直感的に理解している。………世の中に本当に必要なのは、ああいう人間(タイプ)だと思う」
狡噛の後ろを歩く船原は話し出す。
「………学生の頃から不思議な子だったよ。どんな揉め事も、朱が間に入ると解決しちゃうの。PSYCHO-PASS色相がいっつも最高にクリアなのって、きっと……ああいうタイプばかりなのかな……」
と、船原はあっ、と思い出す。
「もしかして、朱を振り回してる部下って、あなたのこと……?」
その言葉に歩く足を止めた狡噛は「俺のことをそういう風に言ってたのかあいつは」と呟き、(丁度ライトの落ちている場所だったのか)鞄の中からライトを取り出し折り曲げて先へ投げた。