第9章 狩りに最適な日
「亜希が彼と接点があったことに僕は望外の喜びでね、まぁ、亜希も公安局の刑事だったのだから、至極当然のことかもしれないけれど———」
「……なんでよ…………今更っ………」
言葉を上手く紡ぎ出せない亜希。
「別件で、狡噛慎也———彼を見つけたんだ。情報を集めていたら、亜希の名前もあってね」
と、嬉しそうに話す槙島。
「それで亜希。———君がどんな反応を示してくれるのか、興味が湧いたのさ」
「………何してくれてるのよ、馬鹿……っ。……真逆っ、慎也を殺す気なの!?」
双眼鏡を力が抜けた腕にぶら下げて、叫ぶように話す亜希。
「それはどうだろうね…………」
泉宮寺さん、と猟銃を両手に抱えて帽子を被り装着型の双眼鏡をつけた彼、泉宮寺豊久に語りかけた。
フィールドを見渡して彼は言う。
「ここまでは予定通り。向こうも飲み込みが早いようだね。獲物が賢いほど、狩りも楽しくなる」
「……いいですね。客席からも、観戦しがいのあるゲームになりそうだ」
と、言う彼に槙島君、と泉宮寺。
「君もたまには狩りに参加してみてはどうかね?」
その問いに槙島は答える。
「僕はここで起きる出来事そのものに興味があるのでね。第三者の視点で観察するのが一番です」
泉宮寺はそんなことを言う彼にそうか、と呟いた。
そして彼は槙島と真壁の二人から離れ、奥にある階段を降りていった。
泉宮寺が去っていった後、真壁は話し始めた。
「……はっ。……あなたはここで、高みの見物って訳ね」
「……少しは落ち着いてきたようだね」
レンズを覗きながら言う槙島。
「ほら、そのガラスから彼の活躍する姿をみるがいい。亜希」
「………馬鹿みたい、ほんっと」
そう言う亜希の目は、潤んでいた。
———今更、彼の前に姿を現しても、
———もう、以前のようには振る舞えない。
「……こういう時に唇を噛みしめるのは癖のようだね、亜希。期待通りだよ。見込んだ通りだ」
「………っ……」