第9章 狩りに最適な日
階段の一番上に狡噛と船原が立っている中、その更に上の円状の通路の“客席”に身を潜めている人影が3つ———。
「ねぇ、しょーちゃん。こんな大掛かりな準備をさせて、私に一体何を観てもらいたいのかしら?」
しかもこんなドローンを用意して、と泉宮寺のもう片方のブルーの猟犬に目線を移し、腕を組みながら彼女、真壁亜希は双眼鏡を覗く彼、槙島聖護に問うた。
「どうやら丁度お出ましのようだ。……亜希、せっかく客席に居るのだから、君もそのレンズから猟場を見てみるがいい」
と、真壁の片方の手に握られている双眼鏡(槙島と同じもの)を指して言う。
「なんなのよ……一体……」
嫌々ながらもレンズを覗き、槙島が見ている方向と同じところへと視野を移した。
「………っ!」
レンズ越しからは、囮であろう茶髪の女性の前を、先陣切って歩くツンツンした髪の毛の彼、公安局の刑事———三年ぶりに見る、狡噛慎也が居た。
「……驚いたかい? 懐かしい姿だろう」
———狡噛慎也、彼が今回の獲物だ。
「………慎、也………?」
三年越しに見る彼の姿に、彼女は心臓が高鳴った。しかし、決してそれは、淡い恋心からなる高鳴りではないと、彼女自身わかっていた。
三年前、目の前にいる血縁者の彼、槙島聖護に対抗するすべもなく公安局にあった自分の居場所を捨てて、自分はここに来たのだ。
脳が揺さぶられるような感覚になってしまい、言葉が出ない真壁にニコッと笑みを見せた彼は、話し出したのだった。