第15章 ただ君の寝顔に【千景】 普通夢
「!?そうだったんですね!それはお手間かけました!/////」
「いや、良いよ(俺も有意義な時間だったし)」
スルッといづみの肩から手を抜く。
それでもまだ赤面して俯いているいづみを見る。
「……あ、あの……粗相しませんでしたか……」
「え?」
「何か寝言言ってしまったり、ヨダレとか……」
「ははっ、大丈夫だよ(寝言……寝言、ねぇ)」
「あぁ、良かったです。先輩、今回の私の失態は綺麗さっぱりわすれ……」
「そういえば寝言言ってたな。俺の名前呼んでたが、なんの夢を見てたんだ?」
「それこそ1番、わ、忘れてくださいませ!!!/////」
「ははっ、語尾おかしなことになってるぞ」
俺はいづみの反応が可愛いと思っていた。赤面するいづみ、一生懸命隠そうとするいづみ、……あれ、まさか茅ヶ崎が言ってたことって……そうか、あれは俺の気持ち、じゃなくていづみの想いを知っての発言だったのか。
♪次は〜〇〇駅〜〇〇駅です〜おおりのかたは♪
電車のアナウンスが降りる駅を告げる。
俺といづみは降りる準備を済ませる。
時刻はもう定時の時間を過ぎていた。それでも、会社には1度寄る必要があった。
「さ、降りるか」
「やっぱりさっきのこと、忘れて下さいませんか」
「それは今後のいづみ次第、だな」
「え?!それどういう意味ですか!?」
人の波と共に押されて電車を降りる。
無事に合流し、会社に2人で向かう。
その間は特に先程の忘れるかどうかの話は一切せず、無言のまま過ぎた。会社の社員証で、部署の部屋に入ると茅ヶ崎が残っていた。
「お疲れ様でした(あれ、先輩いつもより機嫌いいな、それに比べていづみは何だか焦ってんな……まさか、本当にフラグ回収とか……ワロ)」
爽やかな笑みでこちらを向いてくる。
そして椅子から茅ヶ崎が立ち、荷物をまとめ、そのままいづみへと近づく。何か耳元で呟くとボンッといづみの顔が赤くなる。
「おい、茅ヶ崎……」
止めて入ったのは俺自身も予想外だった。
茅ヶ崎は俺しか見えない角度で、ニヤニヤとこっちを向いて、お疲れ様ですと部署の外へ出る。そして、スマホが鳴る。もちろん、茅ヶ崎からだ。
"フラグ回収乙でしたー"
2020.8.5 執筆完了