第2章 今なら素直に好きといえる【左京】 甘裏
時刻は深夜に突入していた。
リビングの明かりをつけ、ソファにでかい態度で座っていたのは、眼鏡をかけた男。
そして軽い足音がしてドアがギィと音が鳴る。その男がドアの方へ向くとキッと睨みつける。
「左京さん、そんな睨まないで下さい」
リビングに伏見臣が訪ねてくる。
「何だ、伏見か」
はぁと深くため息をつき、眼鏡を持ち上げる。
その間もコクコクと時計の針が時を刻む。
「こんな夜中にどうしたんですか」
「いづみがまた寮に帰ってきてないみたいなんだ」
年頃の女が……と小言を続けていうと、臣は微笑み内心で相変わらずいづみには甘いなぁと思う。
「それにしても、この時間、ってなると流石に心配ですね。俺、バイクで探して来ましょうか?」
「いや、良い……今日は元々遅くなるとは聞いていた」
左京は言葉を止める。
「ところで、伏見はこの時間にどうしたんだ?」
「眠れなくて、飲み物を取りに行こうと思ったら明かりがついてたもんでしたから」
「……そうか。明日の稽古に響くから早めに、な」
臣が返事をする前に玄関の方からガチャとドアが開く音がし、バタンと閉まる。その後もガチャガチャと再びドアノブを捻る音が続く。
左京と臣は玄関に向かう。
「……あ!左京さん、ドアが閉まらないんですぅ……うーん。うーん」
そこにはいつも以上にふわふわとした声で、頬は少し赤らめ、目はトロンとしているいづみの姿がみえた。
左京と臣は目を合わせ、左京はため息をつき、臣はどうした?と声をかける。
「臣しゃん!あのですね、ドアが、んーーー」
そう言って先程よりドアノブをガチャガチャと引いては回して、押しては回してを繰り返している。しかし、ドアはしっかりと閉まっており、いづみの行動に2人は疑問を覚えた。
「閉まってるよ。大丈夫だ。いづみ、酔ってんのか?」
臣が近づきドアに鍵をかけ、ドアといづみを離す。
にへらと微笑み、良かったぁと声を洩らす。
「いづみ、何時だと思ってんだ。遅くなるとは言え、この時間はもう終電は無くなってるだろう。そして、ここの消灯時間を何時だと思ってるんだ……くどくど」
腕を組み眉毛をピクピク動かし、眼鏡の奥では目を光らせている。