第15章 ただ君の寝顔に【千景】 普通夢
部下のいづみと電車に揺られる。いつもなら電車でこんなに長いこと揺られることはない。
部下と国内出張ということも有り得ない。
だが、今回は先方でいづみと行くはずだった部下がヘマをしてしまい、謝罪も兼ねたものであった。
本来だったヘマをした部下が一緒に行くはずであったが、あろうことにもインフルエンザで出勤停止となっている。
不可抗力だとしても、何にも示しがつかない。これでは次の仕事を与えるにも時期やタイミングをみないことには仕事を任せられるはずない。
はぁ……と溜息を付く。
先方も悪い人ではなく、話せば分かってくれる相手であって、無事に謝罪も終わり、部下のいづみにはゆっくりして良いよって声をかけていた。もう取引は終わりだから緊張もしないで良いとも伝えた。
最初は気を使い話題を提供したりと俺もいづみもしていたが、電車の乗車時間が多くて段々と口数が少なくなっていった。
そういや、いづみのこと、茅ヶ崎が言ってたな……あいつ、部下を思いやるタイプだったか?でも言われたのって確か……
"長い電車の旅ですね。もしいづみとのフラグ回収したら報告よろです"
茅ヶ崎の言葉に一層、俺の機嫌が悪くなる。
そしてすごい顔をしていたのか、目の前の人は俺から目線を外す。茅ヶ崎の言葉が意味が分からなすぎる。
しかし、いづみは経験年数など考慮しても仕事は出来る方で、更に度胸も備わっており自分の意見はしっかり言うタイプであった。
更に言えば笑顔も人並み以上に良く、取引先からの男性も気に入られていた。
チラッと隣を見れば、こくりこくりと身体が波を打っていた。
……取引はおわりだとは言っても、仮にも上司の前だぞ?度胸が備わりすぎないか??
こくりこくりと波打って反対側の人へ寄りかかろうとする。
スっと肩を抱き俺の方へと寄りかからせる。
俺は、何してんだ?
まぁ迷惑かける訳にもいかないしな。
波打ってた身体は俺の肩へともたれかかっていて、動かずにいた。それを確認し、そっと肩から手を離す。