第11章 最初のキス【至】 甘夢
そう。今日は2ヶ月記念日。
「茅ヶ崎さんー」
彼女はいづみ。俺の彼女で、一つ下の後輩。俺が教育係であったことと、ひょんなことから俺がたるちだとバレて、更にいづみが同じランクの廃課金勢であろうハイカスピーナだということが分かった。
それが分かった日から俺たちの関係は一気に変わった。周りには内緒にしているし、俺もいづみも外では完璧なエリートで外面固めてるから、俺たちの関係を知ってると言えば、同じゲームをしているNEOこと万里だけだ。
と言っても、こうやってほぼ毎日一緒に帰ってる訳で、ヒソヒソと影では色々言われてるんだけど。それもそれで放置プレイしとくのも面白いと思い、2人共黙っていた。あと、必ず俺がいづみの家にお邪魔して、協力プレイをやってから帰るって流れになっていた。
寮からいづみの家は近い。
はぁと息を吐けば、白い息がふわっと空気中に舞う。
コートに身を包むも、それなりに肌寒い。
春や夏とは違い、いづみのコートや冬服を見るのも俺にとっては眼福。
「待ちましたー?」
「丁度今来たところ」
後はトントン拍子にことが運んで、いづみと付き合うことになったのだった。
それも今日は2ヶ月の記念日で、俺的にそんなに続くとは思ってなかったから、この気持ちを何かにしておきたいと思って、密かにプレゼントを用意してきた。
後は、いづみがその記念日を覚えてるかって話なんだけど……この様子じゃ覚えてないな。今週は仕事も押し寄せ、イベも重なり、かなりハードだったし。
「よかったです」
そう言って笑ういづみに俺も微笑む。
「それじゃ、行こっか」
はい、と返事をして俺の左隣をてちてちと歩いてくる。正直、可愛い。
「冬、ですねぇ」
「そうだね」
「今日もお疲れ様でした」
「いづみも乙ー」
ふふっといづみは笑っている。
やっぱり何の日かは覚えてないなと改めて自覚する。
「今日も寄っていきますよね?」
「いい?」
「もちろんです」