第9章 想ってる【万里】 甘夢
「んしょ……やっぱり重たいなぁ、でも負けない、頑張らないと、よいしょ」
「あれ?万ちゃんの彼女のいづみちゃんじゃないっすか?」
「本当だ、しかしあんな重たいもの1人でどうすんだ」
「近くに万ちゃんもいなさそうッスね」
重たい荷物を運んでいるいづみを臣と太一は発見をする。その姿はもう地面に荷物が擦れていて箱はよれていた。
「いづみ、何してんだ?」
臣と太一がいづみに近寄ると、いづみは1度荷物を地面におろした。見上げると臣たちの姿が見えた。
「えと……臣くんと太一くんだ」
「そうっすよー!万ちゃんはいないっすか?」
「うん。いないよー」
「これ、1人で持ってたのか?」
「1人で持ってけるかなーと思ったんだけど、ちょっと重たかった」
「いや、ちょっとじゃないだろ」
臣はいづみの荷物をひょいと持つ。
太一もいづみの手荷物を持つ。
いづみはいきなり手ぶらになってしまった。
「わわ、大丈夫!時間かければ運べるから」
「でも、箱の下もうヨレヨレっすよ」
「うっ……」
「だな。いづみさえ良ければ荷物運んでくぞ」
ありがとうとお礼を臣と太一に述べ、3人で歩き始める。
「すぐそこまでで大丈夫だから」
「すぐそこが家なのか?」
「うん。もう少しだから近くまでで大丈夫」
「……もし、いづみが良ければ部屋まで持っていくぞ」
「いやいや、申し訳ないよ」
「いづみちゃんが良ければ持って行ってあげたいっす!」
「うーん。……そう?ありがとう」
そして、いづみのアパートの前に着くと階段があった。あがればそこは3階まで登らなくてはならず、臣と太一も流石に汗だくになっていた。
「ごめんなさい、重かったでしょ。もし良かったら中で涼んでいって」
「ありがとう」
そう言って臣と太一はいづみの部屋にお邪魔する。部屋の片隅に先程の重い荷物を置く。
部屋はエアコンがかかったままで、入った瞬間涼しかった。いづみはキッチンでお茶を汲み、臣と太一に持て成す。
それから3人で万里の話を中心に盛り上がる。