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夢の世界へ

第8章 特別扱い【万里】 切夢



「摂津くーん!これってどうやるの?」

「あぁ、ここはこうで……あ、そこは違ぇ、その単語じゃなくて、こっちの単語を使うんだよ」

「ぇ?何で?だってこれだって聴くって単語だよ??」

「それは聴くだけど、日本語訳すと違ぇんだよ」

「何で日本人は英語を元から喋れんのだ」

「そんなこと言ったら他の国だってそうだろ」

「そうなんだけどー」

期末前、夕日に染まる教室で俺は同じクラスのいづみのテスト勉強に付き合う。
俺は人生スーパーウルトライージーモードだからこんな勉強をせずとも赤点回避なんて余裕だし、何なら首席になることだって大した事ない。
俺はただ、何にも面白いものがなくて人生色褪せていた所に、同じクラスのいづみが声をかけてきた。
しかも、屋上でサボってる俺を見つけ、必死に届きにくいハシゴを隣のフェンスから登って来ようとするのだから、俺は焦った。
俺はクラスで浮いていたからそれなりに友達は少ねぇ方ではないけど深い関係の奴なんか居なかった。
ハシゴに捕まったいづみは、下を向いては宙ぶらりんになっていて、筋力もないから落ちそうになっていた。俺は気がつけばいづみの腕を引き上げていた。
屋上に上がってきたいづみの顔は青ざめていて、ガタガタ震えていた。
それからは何を話したか、何故テスト勉強に付き合うことになったのかは覚えちゃいねーが、俺に取っては必死こいて何かをしようとするいづみは目で追いかけたくなる程面白かった。
ま、あいつドジだから大体失敗して終わるんだけど。

「わっ!もうこんな時間だ!!帰らないと」

「ん?本当だ。集中してたな」

気がつけば、日は落ちていて、空も暗くなっていた。

「大変、大変、怒られるー!」

「誰にだよ」

「親に!」

「門限付きなのかよ」

「うん。うち、一人娘だからさ、厳しくて」

「送っていく」

「本当に?やったー!」

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