第19章 長年の片想い【紬・丞】 甘裏
「ねーねー、紬、丞ー。幼なじみだから聞くけど、男の子ってセックスしたらもう女子を彼女として扱ってくれないのかな」
紬「……え?」
丞「……は?」
爆弾発言がされたのは学校での部活が終わり、いつも通り丞の家で予習、復習と言った勉強をしているところ。
いづみとは、紬も丞も子供の頃から幼なじみで小学校はもちろん、中学校、高校と同じだ。高校ではいづみは演劇部ではなく、生徒会がある為、部活は強制ではない。登下校とも仲良く3人で毎日行く。
「うん、だから〜男の子ってセックスしたら彼女じゃなくてセフレとして認識しちゃうのかなって」
紬「急にどうしたの?」
丞はいつものようにため息をつき始めた。優しい紬がその話についてきこうとしてくれていた。
「いや、この間ね彼氏が出来たんだけど、……その、なんて言うの……してからあまり普通に遊んでくれなくなって////」
途中でガタッと丞が机の上からノートや教科書を落とす。紬は穏やかな顔をしているも、今にも持っているシャーペンをかち割りそうになっている。いづみは昔から鈍感で、2人の演技に誤魔化されては、本音なのかすら分かっておらず、幼なじみであるのに2人の気持ちに気づいてないことが多々ある。
紬「どういうこと?」
丞も目を見開いてこっちを見つめている。
「……こう、少女漫画で読んだものとは違って。もっと……」
紬「ううん、その前」
「ん?その前?」
丞「いつから彼氏が居たんだ?」
「この間〜ほんの2、3日前かな」
紬「俺たち何も聞いてないけど」
「ぁ、言うの忘れてた!」
丞「ほぅ」
紬「どこの誰さん、なのかな」
くるっといづみは紬と丞のほうへ向き直すと紬に片手を取られ、もう片方の手は丞に握りしめられていた。
「ぇ、え?2人ともどうしたの?」
紬「そのよく分からない人に、いづみちゃんが取られたと」
丞「これは相当」
紬「怒ってもいいとこ、かな」
そのまま紬と丞に握りしめられていた手を床に押し付けられ、いづみはバランスを崩し後頭部から床に寝そべっていた。いづみは見上げると紬と丞の顔が見えた。ふと視界が丞の顔でいっぱいになる。
唇にはやや重いような、触れるだけのような、少しばかり硬い丞の唇が乗る。