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マイハート・ハード・ピンチ

第2章 BBQしよう!


校舎の裏庭に、焼ける肉の芳香がもくもくとした黒い煙とともに立ちのぼる。
その香りに吸い寄せられるかのように、音楽室を後にした珊瑚は階段を駆け寄り裏庭を目指した。

グラウンドを横切り、柔道場に駆けつけると、すでにバーベキューの準備を済ませた翠と、練習で疲れ切り、お腹をすかせた柔道部員と琥一の姿があった。
「あ、珊瑚。やっと来た!」
翠が嬉しそうに珊瑚に駆け寄る。ここ数日、ずっと男の子ばかりに囲まれていたので、女の子に会いたかったのである。
「練習が長引いちゃって。遅くなってごめん」
珊瑚が謝ると、新名がすかさず、
「いいっすよ!珊瑚さん。女の子が増えた方が、俺らも楽しいし!ね、嵐さん!」
「んあ?ああ。…日波はまあ、いいとして(月島の親友だし…)、なんで桜井兄がここにいるんだ?」
嵐が訝しげに琥一を見る。
すると、すかさず珊瑚が、琥一と肩を組み(ここで琥一はかなりしゃがむ)、
「ああ、コウちゃんはわたしが呼んだの。お肉といえば、コウちゃんとわたしでしょ。コウちゃんにはこのまえ栄養補給してないし」
ちゃんと大迫先生には許可を取ってます!と珊瑚がウインクし、右手で誇らしげにピースする。琥一は満更でもなさそうに、されるがままになっている。まるで小さな妖精と獰猛な虎といった組み合わせの二人である。
「おう。そういうこった。つーか肉早く食わせろ」
全く会話についていけない新名だけが「栄養補給…?」とぽかんとしている。
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