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マイハート・ハード・ピンチ

第6章 新名の葛藤


新名の家のインターフォンを鳴らすと、中から新名の声がした。
「はいは〜い、今出ますよっと…ゴホ」
ガチャリと扉が開く。
「え…っ!?翠さん?なんでここに…」
翠の顔を見るなり、新名は驚いて目を見開く。
彼の額には冷えピタが貼られ、顔半分はマスクに覆われている。よほど体調が悪いらしい。
「いや…新名のことが心配で、様子を確認しにきちゃった…迷惑だったら、ごめんね?」
はい、これお見舞いの品。と、翠がポカリやゼリーの入った袋を彼に手渡した。
それを受け取った新名の瞳は、風邪をひいたせいなのか、少し潤んでいる。
「ああ〜…アンタはもうっ…こっちの気も知らないで…」

時間があるならちょっと上がっていきなよ、と新名が言うので、翠は新名の部屋にすこしだけお邪魔することにした。家事でもなんでも、少しでも手伝えそうなことがあればしてあげたいと思ったからだ。
が、一方で新名がはりきってお茶を出そうとするので、翠は無理やり(力ずくで)彼をベッドに横たえ、寝かしつけた。

ベッドにはいった新名は、やはり心底体調が悪いらしく、真っ青な顔で横になっている。
「あーあ…今日ばっかりは、アンタに迷惑かけずにやり過ごすつもりだったのになあ…」
翠に冷えピタをとりかえてもらいながら、新名がぼやいた。
「ふふっ!部員の健康管理は、マネージャーの仕事でもあるから。でも、今後は夏でも油断して薄着しちゃダメだよ?」
そう言って翠は新名の頭をぽんぽん撫でた。
新名はしばらくそれを黙って受けていた。
しかし、少しして、険しい表情で突然翠の手首をがっしりと掴んだ。
「…新名?」
先ほどまでの陽気な様子から、突然、表情に陰りが見える。そんな新名の豹変ぶりに、翠は戸惑う。身体を硬直させ、思考停止している翠に、新名は絞り出すような声で、ゆっくりと語りかける。
「…翠さんはさ。…今日、俺がいなくたって、十分楽しいはずでしょ」
「…えっ?」
翠は新名の突き放すような言い方に、動揺が隠せない。新名は「はぁーっ」と乾いたため息をついて、左手の甲で目を覆った。
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