第5章 5
かかしサイド
火影としての俺の幸せは決まっている。
里と人々の平和だ。
はたけかかしとしての幸せか…
正直自分が誰かとともに人生を生きるなんて昔は考えもしなかったけど、やはり人間は人間と関わりあい、傷を癒したり、乗り越えたりしていくものだと思った。
実際に自分にもそんな特別な思いをもつ相手ができたのだ。でも現実はいうほど甘くもない。
俺の彼女は病に侵されていた。
忍界対戦が終わり、気のゆるみもでたのか一気に悪化した。
五代目ですら完治は難しいといったのだ。
治療をして、苦しめるよりは残りの時間を有意義に過ごすほうがいいと。
何かから襲ってくる脅威からなら守れるにしても、病となるとそうもいかない。
彼女と何度も何度も話し、泣き疲れるほど泣いた。
彼女は結婚を望まなかった。
俺は結婚したかったのに。
でもそれだけはできないと強く断られた。
すなおにえまの気持ちはうれしかった。
なんていうか、まっすぐで正直で心を射抜かれるというか、ぐっときた。
でも、まぁ俺の発言は完全に彼女の失恋を示している。
結局は悲しませることになるのだ。
そう考えると切ない。
だが次の瞬間、彼女はいった。
「かかし先生。話してくれてありがとうございました。
私は、話をきいた今も変わらずあなたのことが好きです。
でも先生に大切な人がいるのならば、その人と先生が幸せな時間を過ごせることのお手伝いをすることが私のやりたいことだと思います。
実際、私はこれが夢としてさめるのか、現実にいつ引き戻されるのかまったくわかりません。
でも、いつか消えてしまう存在ならば、できることはやりたい」
迷いのない目だった