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あなたの幸せ

第5章 5


「そんなこと考えてくれてたんだね。えまは優しいね」
なんだか胸が苦しくなった。
先生は笑ってくれているのに、儚く見えたのだ。

「あの、突然こんなこといって迷惑…でしたかね?
人って幸せの価値観て違ったりすることもあるし、それに先生に彼女がいるとか、何にも知らないまま言ってしまいました…」

ふーっと一呼吸置く音が聞こえて、かかし先生はいった。

「そうだね。俺はいまや火影。この里と人々を守ることが一番で、平和でいられることが火影としての俺の幸せになるね。でもえまが言ってくれている意味は、はたけかかしとしての幸せってことでしょ?正直火影をやっている以上、それは二の次になってしまうのかもしれない。
でも実は大切な人がいるんだよ。でも婚約はしていない。」

胸がズキッと痛んだ。同時に心臓がバクバクと鳴り響く。
そっか、そんな人がいたんだ。
いや、いないほうがおかしい。

「婚約、結婚していないのには理由がある。彼女がそれを望まないんだ。彼女は忍界大戦後から病気をわずらってしまっていてね。余命は半年、長くて一年あるかないかなんだよ。」

また胸が痛んだ。自分が完全失恋しているのと同時に、どんなけかかし先生の人生はつらいんだよってもうツッコミをいれるしかなかった。あー、いろんな意味で涙でそうや。

でも私自身も、いつ夢が覚めるのか、現実に引き返すのかわからない。今やらなきゃいつやるんだ。天井を見上げて、出ない答えにもんもんとしている日々よりも、今できることやっとかないと、気が付いたら後悔するじゃん。

私は沈黙を破った。

「かかし先生。話してくれてありがとうございました。
私は、話をきいた今も変わらずあなたのことが好きです。
でも先生に大切な人がいるのならば、その人と先生が幸せな時間を過ごせることのお手伝いをすることが私のやりたいことだと思います。実際、私はこれが夢としてさめるのか、現実にいつ引き戻されるのかまったくわかりません。
でも、いつか消えてしまう存在ならば、できることはやりたい」

目はもう伏せなかった。
これが神様か仏様か誰だか知らないけどくれたチャンス。
自分の好きな人が彼女といるところを見るのはつらい。
でもこの人がまた自らを戒めて、闇にとらわれる姿をみるくらいなら、耐えられると思った。
私は看護師やってた時もあるし、ケア全般はできる。
問題ない。
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