第6章 文化祭 *
この時初めて聖臣が、怖いって思えた。
「震えてる?怖がるなよ…まだ何もしない」
フーと息を整えて、今にも襲いそうな感情を宥めているみたいだ。
「なぁ沙耶、俺の事好き?」
「……す…きだけど…」
「だけど何?」
「今の聖臣怖い…」
「なんで怖い?」
「怒っているから…」
「怒っているのは、わかるんだ…でも今俺がどんな気持ちでいるかなんてわからないよな?」
コクリと頷くと、『はぁ、マジでムカつく』と聖臣は悪態ついている。
私についた言葉なのか、それとも侑君に対してなのかわからない。
声のトーンとかで怒っているのはわかるし、聖臣の気持ちなんて言ってくれないとわからない。
「…気持ちまでわからないから、言って欲しい」
「言ったら最後なんだけど」
「なんで?」
「抱き潰したくなるから…」
「抱き潰すって…」
苦痛に歪む聖臣が、ひどく辛そうでまたフーと息を吐いて我慢している。
「今言ったら本気で抱く、沙耶が泣いても懇願しても止められない…感情に任せて沙耶を泣かせたくない」
「でも、言ってくれないとわかんないよ」
何を言っているの?『好き』の気持ちもあやふやで、彼らに対して答えも出せてないままでいるのに。
「はぁーバカ沙耶、俺がこんなにも我慢してるのに、そう言うこと言うかな」
こんな事言ったら怒るかもしれないけど、自分を好きになってもらう資格なんてないって思っている。
けど、苦しそうにしている聖臣をほっとけない。
「だって、苦しそうにしている聖臣をほっとけないよ…」
「バカ…後悔するなよ」
覆い被さる重みが増すと、そのまま聖臣との距離が近づく。
触れるキスが合図、離れたと思ったら啄むようなキスをして、暖かい舌が口内に入っていく。
「うんんっ、はぁ…あぁっ‥」
深いキスは、病室にしたときより濃いもので舌と舌をお互い絡めあい、息の仕方も分からない程夢中になる。
「…きよ…お…み」
離された唇から銀糸が連なり、呼吸することを覚える。
「ちょっと待ってろ」
聖臣がベットから離れていくと、無意識に袖を掴んでしまう。
「すぐ戻るから、寝るなよ!今夜は、ずっとここにいるから」
頷くと部屋から聖臣が出ていく姿を見ていると、熱くなった体を持て余しているようで、少し寂しいと感じた。