第2章 最悪な彼奴ら
誰かの声が聞こえる…怒った声、コレは…聖臣?
薄らと聞こえる声に耳だけ傾けた。
「あの事故で沙耶の右腕と軸足となる右足が、変な角度に曲がったことで全てのアキレス腱が断裂している。
仮に手術をしリハビリを頑張れば歩ける様にはなるが、前のように高く飛ぶことなんてできない。
最悪なんだよ…母親の事も大好きなバレーも、全てを失う現実を突きつけるには幼すぎる」
コレは、先生の声だよね?
高く飛べないか…。
やっぱり私は、バレーが出来ない体になったんだ…。
そりゃそうだよね。
あの事故の時、命が助かったと思うより腕や足が、ちゃんとくっついているって事に安堵した。
でも、救急車のサイレンが大きく聞こえてくると、体中が痛くてしょうがなかった。
血もいっぱい流れて、お母さんのか自分の血なのかもわからかったくらい。
そんな状況の中朦朧としながらも、自分の周りを動く人達は、やけにスローモーションのようにゆっくり流れていた。
コレが、死ぬ間際なのかなっては正直思ったり。
今だって、動きたいのに…目を開けたいのになんで出来ないだろう。
「あんたが、遥叔母さんを特別な様に俺にとっても沙耶が……。
自分の感情だけで沙耶を巻き込むのはやめろ!」
あんなに怒った聖臣の声、初めて聞いた。
普段怒る事はあるけど、あんなに人に向けて怒ると言うよりは、殺意的な視覚も感じられて少し恐い。
何でだろう!言われた言葉だけで言ったら、私を大切に思ってくれているのは間違いじゃない。
先生は、お母さんと私を何故か兵庫に連れて行きたいみたいだけど、聖臣は、行かせたくないみたい。
聖臣は、何で行かせたくないの?
だんだんと薄れていく声は、闇に沈んでいく。
何かを叫んでいる聖臣の声は、もう聞こえてこない。
なんだか切ないなぁ。
すぐ近くにいるのにとても寂しい。
聖臣に会いたい。
でも、会ってどうする?
どんな体になっているのかもわからない、ましてやバレーもできない。
そんな私に価値なんてない。
聖臣も元也もバレーが出来ない私を置いて、どっかに行っちゃうかもしれない。
足や腕に絡まった黒い糸は、私を眠りから目覚めないように引きずり込まれいくようだった。
また、深い底にたどり着く。
もがけばもがくほど暗い底に降下していった。