第6章 文化祭 *
一度吐き出した心は、容易く自分の意思とは関係なく崩れていく。
こんな事言う私は、私じゃないから…。
事故に合う前の私なら…何て言った?どんな子だった?自分が分からない…。
「ねぇ、何で私は記憶が無いの?
何でわからないの?何がわからないのか…わからないっ…どうして、怖くなったのかな?」
気持ちの整理がつかないまま、聖臣に思う気持ちをそのまま乱雑にぶつけていく。
「何が、怖くなった?そのとき何が見えた?」
それでも聖臣は、ゆっくり深呼吸するように優しく話しかけてくれる。
「昼休憩の時一人で、中庭に行ったの…。
そしたら体育館が見えて、自然と足取りは体育館に向かって行ったけど、足が竦んで中に入れなくて…その時、聖臣と元也と何かしている映像が、一瞬頭の中に浮かんだの。
話ている内容まで分からなくて、楽しそうにしている二人を見ているだけだった…」
「そこに何かあった?」
「わからない…思い出せない。
私も何か言ってたかもしれないって思ったら…真っ暗になって…気づいたら頭が割れるくらい痛くて、訳がわからなくっていた。
不安になって逃げるように離れたのにっ…苦しくて怖くて私だけ置いてきぼりになった気分になって。
そしたら、侑君からLINEがきたの。
ユニホーム姿の侑君と治君達の笑った姿とバックにバレーコートが写っていて、それを見ると心臓が、ドクドクと痛くなって…苦しくて呼吸ができなくなっていた…」
聖臣は、ギューと抱きしめてくれるけど、この先を聞くのが怖い。
けど…知らなきゃ何も進まない気がする。
「聖臣…私は…何を失くしたの?聖臣は…知っているの?」
黙り込んでいる聖臣は、ただ強く抱きしめるだけでその先の言葉を言い出せずにいる気がする。
聞いてはいけない事?
でも、明らかにキーワードが見えてくる。
体育館、ユニフォーム、バレーコート…。
失われた記憶は、そこにある気がする。
「聖臣…知っているなら…教えて?」
聖臣の腕を引き離し、目が合えば悲しそうにしている。
「俺は…知ってる…。
今…それを言えば沙耶が、傷ついて壊れて…何処に行ってしまいそうで怖いんだ。
沙耶は、それでも知りたい?」
「怖いけど知りたい…」
「そうか…」
深呼吸を置く聖臣は、とても緊張していて震えているようにも見えた。