第6章 文化祭 *
聖臣side
泣かせたいわけじゃなかった…。
この事を言うのは、時期が早すぎる。
きっと言えば、沙耶の心が持たない。
どうしたらいいのだろう?
繋ぐ言葉が、見つからず頭の中で何度も安心させてあげられるような言葉を探しては、捨てての繰り返し。
「俺は…知ってる…。
今…それを言えば沙耶が、傷ついて壊れて…何処に行ってしまいそうで怖いんだ。
沙耶は、それでも知りたい?」
沙耶に判断を委ねるのは、間違っている事も分かってる。
「怖いけど知りたい…」
震える細い体で必死に恐怖と向き合いながら、はっきりと『知りたい』と伝えてくる。
「そうか…」
小さく呟く声が、震えて正しい言葉も見つからないまま、沙耶を抱きしめた。
「沙耶と俺達の記憶の中は、いつもバレーで繋がっていたよ…」
「バレーで…繋がっている?」
「そう、俺も元也も宮兄弟もだ」
一つ一つ言葉を選んで伝える。
正直言って、これが正しいなんて思ってもいない。
「侑君と治君も?」
コクリと頷くと、沙耶は不思議そうにしている。
「バレーボールは、いつも身近にあった?
それなのに、記憶が無くなったの?」
「そうだな…バレーは、俺達にとって身近な存在で、沙耶にもバレーが傍にあったから、俺達は頑張れた」
「私も…バレーをやってたの?」
「…やってたよ…俺達と引けを取らないくらい上手かった。
憧れも尊敬もあった…沙耶が、とても大事にしてたから余計にそう思う」
「大事にして…いた」
「そうだ…いつも俺達以上に大切にしてくれた。
俺達のことを応援してくれて励みになったし、もちろん沙耶のプレーを見て歓喜したよ」
沙耶のプレーは、他の女子と比べれない程、一つ一つのプレーに意味がある。
ボールを必死に拾って繋げて、勝利に向かうアタックを続ける姿は、今も鮮明に覚えている。
何度もブロックされても、果敢に挑む姿は凛々しく美しい。
何度も魅了させられて心が、熱くさせられた。
「沙耶、今度の文化祭で俺達交流試合をする」
「交流試合?」
この試合で、沙耶を体育館に連れて行く。
どうなるかはわからないけど、俺達の試合を見てくれれば何かが変わるかもしれない。