第2章 最悪な彼奴ら
聖臣side
「目を覚ましていないこの状況で、誰が見たって無理だ。
それに、沙耶が目覚めたとして、なんであんたと一緒に行かなきゃいけないんだ」
「普通ならそう思うよな…ただ俺にとって遥は、昔から特別な存在なんだよ。
だから、その娘の沙耶も一緒に来てもらわないといけない。
勿論、医師の判断としては、すぐにじゃない。
第一段階として、遥と沙耶もICUから出て一般病棟に行くのが当面の課題だ。
沙耶は、バイタルも安定してきているのもあって、ここから出れられると判断した。
来月から個室に移動しても良いと思っている。
ただ、遥は余談がない状態が続いていているから、まだこのままここにいる。
それに、さっきも言ったが俺自身、兵庫に行ってもフリーランスなのは変わらん。
当面は、ここと兵庫の病院を行ったり来たりだ。
その方がやり易いってのもあるが、現状の段階で沙耶の目覚める確率が高いのは確かだ。
それ以上に沙耶が、目覚めた時の事を考えてやらないといけない」
さっきとは違った医師の神妙な面持ちに食い入るように見る。
沙耶が、目覚めた時に何がある?
「それって沙耶にとって最悪な話なのか?」
「最悪も最悪だ!まず、自分が目覚めたとして、事故への精神的なダメージと母親が目覚めていないと言う事実が一つ。
現段階で遥の目覚める確率が、沙耶よりもぐっと低いと考えているからな。それと…」
詰まる言葉に心臓がドクドクと痛みを伴い、息を飲み込むようにジッと耐える。
「沙耶が、目覚めた時に自分自身のことで、その現実を受け入れられない可能性がある」
「受け入れられないって何の可能性だ?何が言いたい?」
あの男からずっしりとした暗く重い空気が流れていく。
「単刀直入に言う…沙耶は、もうバレーができない」
ハァ?何言っているんだコイツ?できないって何?
「意味がわからない?バレーができないってどうゆう事だよ」
医師の服を強く掴みかかるが、その手を退かそうとはしない。
寧ろイライラを受け入れる様にも見え、それに一層拍車をかけた。