第6章 文化祭 *
あ~あ~くまさんが…。
残念そうにしていると、聖臣はクスクス笑って頭を撫でくる。
「食べないと勿体無い。
くまのおにぎりの中、鮭が入ってておいしいから沙耶も食べてみろよ」
「しゃけ?グリズリーは、しゃけ好きだもんね」
「なんだそれ?」
お互い顔を見合わせて笑う。
ちゃんと笑えているかな?
笑顔でいたいのに、心は黒く染まっていく。
私じゃない私が、影を落としていくんだ。
「早く食べよう、結衣ちゃんも元也も時間ないよ」
「沙耶、午後の授業どうする? 」
「体調もいいから出ようかな!何の教科だっけ?」
結衣ちゃんに問われて、ちゃんと向き合わないといけないと言い聞かせてはギュっと手に力をいれる。
「次は~授業じゃなくて、来週の文化祭の出し物を決めるかもね」
「文化祭?」
結衣ちゃんが、楽しそうに言うからちょっと期待してしまうけど、クラスメイトの顔や名前も覚えていないのにちゃんとできるだろうか?
元也と結衣ちゃんが、クラスの出し物を何にしようかと思いついたものをそれぞれ言い合っている。
カフェやお化け屋敷、色々と出てきているのに何だか話に乗れない。
「沙耶に言ってなくて悪い!来週末の金・土とやるから」
「へぇ…そうなんだ」
ギューっとまた手を強く握りしめる。
「不安?」
「えっ!!」
聖臣が、やっぱり気にしている。
「そんな事ないって、何をやったらいいのかわからなくて考えてただけだって、そんなに不安そうにしてた?」
黙り込む聖臣に畳みかけるよう笑顔で、『大丈夫』と言い聞かせる。
「沙耶」
『ピンポンパンポーン!!
男子バレー部は、直ちに体育館に集合してください』
「聖臣行かないと、あの声飯綱先輩だ」
「アハッ、次期主将だね~」
「結衣ちゃんは、知らないからあの人鬼だから」
弁当の中身を口の中に駆け込んだ後、バタバタと体育館に向かって走って行く二人。
「飯綱先輩って何者?」
「バレー部次期主将 飯綱掌先輩で確かセッターやってたかな?
結構ストイックなところあるから、元也が鬼だって喚いてたよ」
「へぇ~そうなんだ!ストイックなところって聖臣にもあるから、案外気が合うんじゃないかな」
結衣ちゃんは、苦笑いしながら急いで出て行った二人の荷物を片付け、保健室を後にした。