第6章 文化祭 *
聖臣side
「その子と同じ境遇と言えばよいかな?
彼女は、まだ浅いか…これから大変だな」
何言って?
同じ境遇?意味不明だ。
「そう、警戒するな!彼女の事情は、監督や先生から聞いてるし、相談に乗ってやれとも言われている。
それより、彼女を寝かせてやったらどうだ?」
ずっと俺にしがみついていた沙耶が、スヤスヤと寝息を立てている。
そっとベットに横たえても、袖をギューと握りしめてたままだ。
「彼女、不安そうだな…」
「あんた何なんだ?」
「別にさっきから言っているが、彼女と同じだと言っている」
「だから何の?」
溜息をつきながら、目線を流してくる。
その姿は、妙に大人っぽい。
一つ年上だけなのになんなんだ。
不意に見せる表情は、影を落としそれが病室にいた沙耶と重なって、壊れそうな儚さが優麗に感じてしまう。
肩まである黒髪と少しきつめな目元が、こちらを見つめ返ししばしの沈黙が流れる。
それを掻き消すように、先輩の携帯から着信が入った。
「はい…うん…今保健室…。
大丈夫、うん…記憶は飛んでないよ」
俺を横見ながら、淡々と話をしている。
聞き耳を立てたつもりはないが、はっきりと聞こえた『記憶が飛んでいない』と。
その言葉が、不穏な気持ちを駆り立てる。
先輩も何かあった?
事故?それともトラウマか?
「あぁ、この間話していた後輩の事だけど、そう今ここにいる。
代わって話をするか?」
唐突に、俺と話をする算段をつける先輩を睨みつける。
「怖い怖い…あいつこっちを睨んでる。
私と彼女が、一緒の括りにされるのが嫌なのかね?
それも踏まえて話を少ししてやってよ、若利」
若利?え?
携帯を放り投げて、顎で出てみろ言う。
しぶしぶ話しかければ、知った口調に驚愕した。
『おはよう、佐久早』
「おはようございます…若利君。
なんであの人…雨宮先輩と知り合いなんですか?」
『光は、何も言ってないのか?』
「言ってません」
本日二回目の溜息にうんざりする。
『すまん!事情もわからんのに代ってしまったな。
光は、俺の彼女だ。
3年前…彼女は、事故で家族を失い光だけが生き残った。
理由があって光は、井闥山学院に転校したんだ』
若利君の衝撃的な話に、言葉が出なかった。