第5章 やがて糸は火となり繭となる
カランッ。
購買部の扉が開き、お客が来たことを知らせるベルが鳴る。
入ってきたのはフロイドだった。
ユウは反射的にジェイドの影に隠れるように身体を動かした。ジェイドはそれに気づいたようで、クスリと笑う声がユウの頭上から聞こえた。
「あれぇ、ジェイドじゃん。何してんの?」
「サムさんに頼んでいた登山用品を取りに来たんですよ」
フロイドはジェイドの身体の影に隠れるユウに気づいていないようだ。
ジェイドは先程ユウに答えたのと同じようにフロイドにも答えた。
「フロイドは何を買いに来たんです?」
「いつもの飴」
カツン。
と、フロイドが近づいてくる音がする。
ユウは思わずジェイドの腕を掴んだ。
その時、
「お待たせ、小鬼ちゃん」
と、裏からサムが戻ってきた。
手に持っている袋にはユウが頼んだ商品が入っている。
それにフロイドが首を傾げた。
「ジェイド、登山用品取りに来たんじゃないの?」
「えぇ、そうですよ」
ジェイドがギザギザと尖った歯を見せて笑う。そして、
「ほら、ユウさん。サムさんがお待ちですよ」
と、フロイドから隠れていたユウの名前を呼んだ。
その時ユウは、慈悲の精神ってなんだろうと考えた。