第5章 やがて糸は火となり繭となる
「買い物ですか?」
「はい、食料品を買いに。ジェイド先輩は?」
「僕はサムさんに頼んでいた登山グッズを取りに来ました」
「先輩、登山するんですか?」
「えぇ、こう見えて部活は"山を愛する会"に入っています」
「山を愛する……?」
「はい。山に登ってキノコを採ったりします。ユウさんは確か部活には入っていなかったですよね?」
「はい」
「これから僕、部活動で山に登るんですが、ユウさんもご一緒しませんか?」
ユウは目を瞬かせ、どうしようと思った。
勿論断りたかったが、フロイドとは違いギザギザと尖った歯を隠しニコリと笑うジェイドは、断ることが躊躇われる雰囲気を持っている。
フロイドとはまた違う雰囲気だ。
ユウは「えぇと……」と視線を泳がす。
側にいたグリムはいつの間にか何処かに行ってしまっていた。
「買い物の途中だし……私、登山用品を持っていないので……」
うろうろと視線を彷徨わせながら、ユウは断る理由を考える。その時、左手小指に結ばれた赤い糸が泳いでいた目に入った。
糸が、ピンッと張っている。
近くにフロイドがいるのだ。