第15章 引き合うさびしさの引力
朝、アラームが鳴るよりも先に目が覚める。
ツイステッドワンダーランドから帰ってきたその日は、高校の入学式だった。
そうか。そういえば、入学式の前日にあの学園に連れて行かれたんだったな。
ユウは真新しい制服を見つめながら思った。
下の階に降り、お勝手に入れば、ふわっと味噌汁の匂いが。
懐かしいその香りに、お腹が大きく鳴る。
ユウのそのお腹の音に、料理をしていた母が気づいた。
「あら、随分早いじゃない。
まだ6時よ」
母は言ってから、「あっ、分かった!」と手を叩く。
「今日が入学式だから楽しみで目が覚めたんでしょ!
分かる。お母さんも遠足前は寝れない子供だったから」
ユウの母はお喋りな人だ。
ユウがテーブルに着き、料理をする母の背を眺めている間、次から次へと色んな話をした。
普段であればきっとほとんど聞き流していたであろう母の話に、ユウはしっかりと耳を傾けた。
久しぶりに聞いた母の声は、まるで子守唄のようにユウの耳に優しく響いた。
「そういえばユウ。なんか一晩見ないうちに凄い綺麗になってない?
お母さん道ですれ違ってたら絶対あんただって気づかない気がする」
ミニトマトが入った、少し形の崩れたオムレツを母がお皿に盛った時、「ねぇお母さん」とユウは母に話しかけた。