第15章 引き合うさびしさの引力
ユウが鏡を潜ると、見慣れた部屋にたどり着いた。
自分の部屋だ。
部屋の中は真っ暗で、置き時計を見ると深夜2時を指している。
部屋の壁にはユウが通う高校の制服がかけてある。
本当に戻って来れたのだ。
部屋はユウが最後に見た時と何の変わりもなく、もしかしたらツイステッドワンダーランドで過ごした期間はこちらの世界では数秒数分程度のものかもしれない。
ユウは自分の部屋から出る。
階段の電気をつけ、一階にある母親の部屋に向かった。
母親の部屋の扉をゆっくりと開けると、扉がキィと小さく高い音を立てる。
油を挿さなくちゃ。と、母が言っていたのを思い出した。
部屋に入ると、母は少し大きめのすうすうと言う寝息を立てて眠っている。
ユウは枕元までいくと、母の肩を揺らした。
「お母さん」
呼ばれたことと肩を揺らされたことで、母は小さく唸りながら目を開ける。
そしてユウを視界に映すと、大きな欠伸をしながら「どうしたの?」と聞いた。
「部屋にゴキブリでも出た?」
ユウは昔一度、夜中に部屋にゴキブリが出たと言って、絶叫しながら寝ている母親を叩き起こしたことがある。
しかし今では彼女は母親の知らないところで、ゴキブリだってムカデだってクモだって、1人で倒せる強い少女になっていた。