第2章 再会
「いらっしゃいませ」
2人のボーイが挨拶と共に重厚な木の扉が開けると、鋭い目つきと銀色の髪が特徴的な男性が姿を現した。
碧棺左馬刻――この界隈を仕切るヤクザだ。この店にも何度か訪れている。
「いらっしゃいませ、碧棺左馬刻様」
私を含めたキャストが全員椅子から立ち上がり、左馬刻さんに向かって深々とお辞儀をする。
ここでは、キャスト全員がお客様をお迎えして、直接好みのソープ嬢を選ばせるシステムになっているのだ。
「これはこれは、左馬刻様。ご無沙汰しております」
店長が仰々しいくらいの態度で、左馬刻さんの前まで歩いて行き、最敬礼をする。
「おう。相変わらず見てて気分の良い光景だなァ。で、今日は俺の知り合いも一緒なんだが、良いか?」
左馬刻さんが親指でくいっと扉を指さすと、店長はまた深々と頭を下げた。
「もちろんです。左馬刻様のご紹介でしたら、断る理由がございません」
店長の言葉に左馬刻さんは満足げに口端をつり上げた。
「銃兎、理鶯、入れや」
扉の向こうから、2人の男性が姿を現すと、キャストはまた全員でお辞儀をする。
「いらっしゃいませ」
お辞儀が終わると、顔を上げ、私は2人の容姿を確認した。
1人目は、半分だけ縁のある眼鏡とワインレッドの手袋が特徴的な細身のスーツの男性。
2人目は――。
「理鶯……さん?」
――ライトブラウンの髪、迷彩服を身に纏った背の高い男性は、忘れもしないあの人だった。