第4章 夢
必死こいて、裁縫をこなす。
いつ兵長が帰ってくるか分からないから。
でも、私はいつの間にか眠りに落ちていたらしい。
長い夢を見た。
それも、私の幼少期の夢。
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実家が貧乏だった私は、
10歳の頃から家が経営する酒屋で働いていた。
この辺りでは珍しい銀髪だったために
学校では馴染めず、ずっとひとり。
手伝っていた酒屋でも、珍しいといつも客に髪を引っ張られていた。
そんなある日の事だった。
いつも通り酒屋で料理を運んでいると
だんだんと周りが騒がしくなってきた。
何があったのかと、騒ぎの方を見ると
男性二人が立ち上がって睨み合っていた。
「オイ、てめぇ俺に喧嘩売ってんのか?」
「あぁ?先に売ってきたのはそっちだろうが」
「ふざけんな、やるか?」
大声で叫ぶ男性たちを周りは盛り上がる。
でも、いくら酒屋にもルールってものがある。
それは、両親がこの仕事に誇りを持っていて私が手伝いを始める前に真っ先に教えてもらった事だった。
「……っ、あのっ」
私はそんなちっぽけな正義感から、自分の倍はある身長の大柄の男たちの騒ぎを止めた。
「…ああ?」
騒ぎの元凶である男たちは
私を見るなり鼻で笑う。
「おぅおぅ、嬢ちゃん」
汚い手で頭をポンポンと撫でる。
やめて!と振り払うと威勢がいいなあと更に笑う。
……何が面白いのか、当時の私はわからなかった。
「大声で騒ぐんだったら、出てってください」
11歳の小娘である私にそう言われ、男たちはプツリとしたのか。
「…金払ってんのはこっちだろ」
男のどす黒い声がまた響く。
「嬢ちゃん、あんま舐めてっと痛い目見るぞ〜?」
小さいながらでも分かった。
ああ、私殺されるって。