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49番目のあなた【D.Gray-man】

第18章  人の生



* * *


 1秒でも早く会いたくて、支部の出入口でこの俺様が待っていただなんて。君は想像もしないだろうな。

 バクは支部長室でひとり、すみれとの再会を思い出す。






 『バ……バク支部長っ!!』


 バクの姿を見るなり、すみれはすぐ抱きついてきた。
 バクはすみれの顔を見てすぐ気づき、そして思う。「かつて、不安と悲しみに囚われていた彼女が、こんなに穏やかな表情になって」と。


 バクとすみれが久々の再会を噛み締めていると、衝撃…というよりショックを受けている青少年が二人。



 (嗚呼、すみれがこんな元気になったのは。
黒の教団は、もちろん。きっと彼ら………ブックマンJrのおかげなんだろう。

 本来なら、自分の役目で有りたかった)



 すみれが自分に心を開いている事に、大人気なくも青少年二人に優越感が募る。同時に彼らに感謝するも、こんな事を想った。


 (すみれがアジア支部へ来た日なんて、ついこの間のようなのにな…)



 アジア支部の地下水路で、不安そうなすみれを見送った。
 彼女の不安を払拭したくて、明るく見送るはずだった。しかし実際はうまく笑えず、彼女を見ていただけだった。

 これから彼女が成長していくその日々が。
過去の悲しみに囚われないよう、何か伝えたかった。
 けれど別れ際になっても、別れの挨拶に代わる言葉は見つけられなかった。


 今でも鮮明に覚えている。
泣いてもいいのに、泣かないように。不安な気持ちを一つも言葉にせず、心を押し殺すすみれを乗せた船が離れていくのを。

 だから、そんな彼女が嬉し涙を流して、再会できたことが何よりも嬉しかった。



 (やはり、自分は……)

―――――すみれが、大事すぎる。





 



 ―――――コンコンコン。

 バクが物思いにふけっていると、支部長室の扉を叩くノックの音が響いた。


 「入れ」

 そう、入ってきたのは―――――。







* * *


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