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49番目のあなた【D.Gray-man】

第18章  人の生




 ガタンゴトン ガタンゴトン




 汽車の窓から景色を覗くのが好きだ。
あっという間に移り変わっていく様子は見ていて飽きない。飽きない、のだが…


「ふぁ〜あっ…座り疲れたさー」


 ラビは「ケツが痛ぇ」とぼやき、大きな欠伸と共に涙をこぼす。何日も何日も汽車を乗り継ぎ、ガタゴトと揺られ続くと流石に身体も辛くなってくる。


 「いやー職業柄、こうゆう旅っつーか。
…移動には慣れてんだけど、流石に気が滅入るさ」


 ラビは遠慮なく気が滅入る原因その1の、2人を見やる。




 「ジジ!ここの業務なんだけど…っ!」

 「そこはリーバーとやってたやつだ!
それよりすみれ、お前ぇはこっちだ!」

 「えぇ?!そんな話聞いてないよっ?!」

 「今言ったからな!!」


 「……」


 黒の教団本部を出発してから二人はずっとこの調子だ。すみれとジジは汽車の移動中に仕事をし続けている。しかも時間が足りないため睡眠時間はいつもより遥かに少ない。
 ラビ達が居る個室の扉が大きな音を立ててガララッと開くも、2人の仕事が遮られることはなかった。


 「そろそろ汽車降りますよ…って、うわ?!」

 「ん、ダグ?どうしたの?」

 「すみれさんっ、どうしたのって…!
個室が書類まみれじゃないですか!」


 個室に入ってきた“ダグ”と呼ばれる青年は白い団服に身を包む探索部隊の人間だ。ダグはラビとすみれとジジの任務をサポートするために同行する。
 彼は「もうすぐ降りますから、片付けましょう」とすみれとジジと一緒に乱雑に散らかった書類を拾い集める。


 「オレも手伝うさー」

 「…すみれさん、これで全部ですか?」

 「あっ、うん。ありがと、ダグ」

 「……(無視かい!)」


 気が滅入る原因その2、ダグ。
出会い頭に言われた言葉をラビは思い出す。



 『君の目はガラス玉みたいだね。
僕を映しているけど、それは反射しているだけで、中には何も届かない』


 『―――は?』


 まだろくに会話どころか、「ラビっす、初めまして」と自己紹介し握手を求めた直後に言われた。

……ちなみに差し出した手を握られることはなかった。




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