第17章 想い思われ反発して
オレの知ってる酔ったすみれは「ちょっと酔ったかな?ふふ」と頬を僅かに染めるくらいだ。
だから、こんな、こんな……!!
如何にも酔っ払っている姿なんて…!!
「ふふ、ビンゴ大会でゲットした〜あ!かぁいいの〜〜」
もはや人格が崩壊している。
これは一体誰さ?!!
どうやらビンゴ大会で当てた景品が余程嬉しかったようですみれはそれを大事に抱きしめている。
「えへへェ、これはぁ!いつか好きな人と〜使うんですぅー!」
うふふ、うふふと目を細め(つーか開いてねぇ)、景品に頬擦りをするすみれ。
え、なに?!好きな人?!
そんな話聞いたことねーんだけど?!
動揺を隠しきれない。
オレはもうそんなすみれを色々と見ていられなくて慌てて側に駆け寄る。
「ちょ、すみれ!大丈夫さ?!」
「あ、ラビだあ〜へへ、ふふ!嬉しい〜」
オレを見て嬉しそうにエヘヘ、ふふふとはにかむすみれ。
潤んだ目で上目遣い、風呂上がりのような上気した頬、ぽてっとした半開きの口。ユルユルに緩んだ笑顔と警戒心。
「飲みすぎさね?!」
「ラビぃ〜!んん…ちょっだけ、ね!」
「ちょっとじゃねーだろ?!」
「らいじょ〜ぶだよー!
楽しくなっちゃってぇ…へへ〜」
すみれは口では何度も「らいじょうぶだからぁ〜」と強がるものの、オレの服の裾をきゅっと掴む。そして触れるか触れないかの距離で甘えるようにすり寄ってきた。
「…ッ」
こんなの、男が可愛いと思ってしまう酔った女のテンプレだ。
(嗚呼、ちくしょ…っ)
それをこんなにも可愛いと思ってしまうなんて。意中の相手…ましてやすみれなのだから仕方あるまい。
それでもオレは悔しくて、赤らむ顔を隠すためにグシャグシャッと自身の赤髪を掻きむしった。
「よぉーし!ラビもぉ、いっしょに飲もー!」
「すみれ、待つさ!」
「ショニ〜はんちょ〜!ラビつれてきまひた…!ひっく」
すみれはぐいぐいとオレを科学班の輪へ連れて行く。
(―――……イヤだ)
こんな可愛くて無防備なすみれを他の奴らに見せたくない。オレが知らないだけでいつもこうなのだろうか。オレには見せないだけで、本当は―――
これが、素のすみれなのだろうか。