第14章 距離
「マジで?そんな事してくれるんさ」
「あっ、でも、皆じゃなくて。ホント少人数で、ささやかな歓迎会なんだけど」
(ふーん。聖戦してるとはいえ、歓迎会なんてするんさね)
ペスカトーレを口いっぱい運びながらそんな話をしていると、白衣を着た賑やかな集団がこちらに向かって歩いてきた。
その集団の中に、楽しそうに仲間とじゃれ合っているすみれがいた。
そんなすみれの姿(ましてやむさ苦しい男達にもみくちゃにされている所)を見るのは初めてで、なんだかモヤっとした。
俺と一緒にいた時の笑顔や、貴族令嬢を装う時の笑顔とはまた別の。こう、じゃれ合っている姿というか。砕けた笑顔というか、素のすみれというか。俺の知らない姿があった。
(…ふぅん、あんな風に笑うんさね)
チクリ、と胸の奥が痛む。
あれから、すみれと話をしていない。
話す機会が全くなかった訳ではない。
どう接していいかわからなくて、俺がすみれを避けている。
ブックマン後継者である俺が、誰とでも親しくなれる俺が。こんな事で戸惑っている。
口にペスカトーレを含んだまま、胸の痛みに気を取られていると
「ラビ!体のサイズ図ろう!」
「は?」
突然、ラビの視界は瓶底メガネの男の顔でいっぱいになる。び、びっくりしさ。確か、コイツの名は…
「ジョニー!これから昼食?」
「そうだよ!リナリー達は食べた?」
そう、科学班のジョニー・ギルだ。
「ラビの団服作ろうと思って!だからサイズ図らせて」
「体のサイズ?んなの別に適当でいいけど」
「えぇ?!そんなのダメだよ!」
ジョニーは団服の機能性について熱弁しだし、いつの間にかテーブルの上に座り込んでいた。
「ちゃんと体に合った団服の方が、防御率が上がるんだよっ」
バンダナもつくろっか?と、ジョニーはメジャーを出しながら、わくわくした表情でラビに撒くし仕立てる。
「それにやっぱ動きやすいしさ。AKUMAとの戦闘でもきっと役に立つから」
「行儀悪いぞ、ジョニー!」
「ラビは神田みたいなロングコートは似合わねーよなー」
「ブックマンもね!あはは」
気付けばラビとリナリーを囲むように、科学班のメンバーのロブ、タップ、ジジ、リーバー班長、そして
「どんな団服がいいかなあ」
すみれが傍に寄っていた。