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49番目のあなた【D.Gray-man】

第13章  現在に至るまで



今まで教えて貰えなかったディックの事を、凡その事を聞いた。




ディックは家業のために、この地に留まっていたこと。そして、その家業とは何かの調査のようで、叔父様と叔母様に関係していたこと。


そのため、叔父様と叔母様のことは洗いざらい調べる必要があったこと。


私が調べていた『事業が上手くいっていない事』『私だけアジア系な事』『危ない事業に手を出した事』等は知っていたようでーーー



(ディックが、知っていたなんて)


信じ難い、事実だった。
今もまだ、信じられない自分がいる。



(ディックは初めから、私の知らない“全て”を知ってたんだ…)


それらを調べるために、私に近づいたの?




そう思うと、ズキッと胸の奥が痛んた。



「もし、すみれが本当の事を知りたいのなら、今すぐ帰るさ」

「……あんなとこ。帰りたく、ない」

「…あんな目に、あったばかりだかんな。無理して今すぐ知る必要はないさ」

「…」

ディックは何も言わない私に寄り添い、マントを肩にかけてくれた。それがとても温かくて、ずっとこのままでいられたら…と思ってしまう。

ただただ、この現実から目を背けたい。


ふと、月光で照らされたディックを見る。ディックの口元から血が滲んでいるではないか。


「…ディック、口元。血が滲んでるよ。」

「こんなん、大したことないさ。」


すみれはそっと、ディックの口元の血を手で拭う。


「……ごめん、な」

「何が?」

「守って、やれなくて」

「ディックの、せいじゃ…」


ディックのせいじゃないよ、と言おうとし、言葉が止まってしまった。
ディックの口元から流れる血は、先程の男性二人に攻撃されたものかと思ったが、違っていた。

ディックが自身で、唇を噛み締めていた。


「ホント、自分に腹が立って…悔しいさ」

ギリッと唇を噛みしめるため、再びディックの口元が血で滲む。


(きっと、無意識に噛んでるんだろうな)


すみれはディックの血がついた自分の手をぼんやりと眺める。



(……このままで、いいの?)

すみれは自分自身に問いかける。


(私の知らないところで、私に関係した人達が傷ついて、ましてや血を流しているなんて…)



そんなこと、あってはならない。


あってはならないんだ。

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