第11章 Xmasと、おめでとう《番外編》
「何気ない日々の感謝を、こうゆうイベントに乗せて伝えるもんなのかなって…ちょっと、思ったんさ。だから、」
すみれに、伝えなきゃいけないって思ったんだ。
俺はすみれの隣へ移動し、腰を屈め目線を合せる。
「すみれ、いつもありがとう。
メリークリスマス」
こんな俺を、いつも待っていてくれて。
自分を待ってくれる人がいることが、帰る場所があることが。こんなにも幸せなものだったなんて、知らなかったさ。
「そして、明けましておめでとう。…今年もよろしく、な」
“今年もよろしく”
あと、どのくらい会えるだろう。一緒に居られるだろう。
この言葉は残酷かもしれないけど、どうしても言いたかった。言って、俺自身がまだ会える事を実感したかった。
すみれはフリーズしてしまったかのように何も言わず、只々俺を見つめるだけだった。
「………なんか言ってさ。恥ズイ」
「ごめ、ちょっと…吃驚して。ううん、すごく嬉しくてっ!
め、メリークリスマス、ディック!…こちらこそ。今年もよろしくね」
「手編みのマフラー、すっげえ嬉しかったさ。ずっと大切にする。」
「うん。…ディック、いつもありがとね」
(それは本当に、俺の方こそ、さ。)
ーーーすみれ、大好きさ。
心の中で、俺はそっと呟いた。
「……今日はっ!Xmasと年末年始のお祝いさ!」
楽しむぞー!と俺は拳を上げ、しんみりした雰囲気を取っ払い、楽しいムードに変えた。
「すみれにさ、こんなお菓子も買ってきたんだぜ!」
「…えっ、これ、食べられるの?!」
「これは東洋の土産でー」
こんなお土産やXmasプレゼントのポインセチアで、すみれから貰ったマフラーのお返しになんて到底及ばない。すみれの楽しそうな顔が絶え間なくて、結局俺の心ばかり満たされてしまった。
時間が許される限り、すみれに会えなかった分を埋めるようXmasと年末年始のパーティーを楽しんだ。
*
数年後。
「ラビ、そのマフラーって…」
「ん?あ、コレ?
…使い勝手がよくて、今も使ってるだけさ」
別れを経て再開する、その日までーーーー。