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49番目のあなた【D.Gray-man】

第11章  Xmasと、おめでとう《番外編》



ーーーすみれ、何してっかな。



俺はそんなことを思いながら、秋晴れの空をぼんやり眺める。雲一つない晴天で、空を遮るものは何一つ無い。

そんな空の下は、ススキで一面の野原である。日の光に照らされ、それらは黄金色に輝いている。なんという絶景か。

(…すみれにも、見せてやりたいさ)


見晴らしの良い丘となっている所で、ディックは辺りを見回す。サァーーっと穏やかな風が吹き、ススキの穂同士が掠れ、優しい音が生まれる。

サワワ サワワワーーー…


ここは欧米ではない、異国の地。

欧米の町並みや田舎風景も美しいが、ススキ以外何も無い風景が、こんなにも美しいとは。

ザァッと少し強い風が吹き、ディックのマントを激しくなびかせた。

(晴天とはいえ、さっむ…!)


羽織っているマントを口元まで覆う。もう秋服だけでは耐えられない寒さだ。

欧米も、だいぶ寒くなっただろうか。
ハロウィン以来、この地に赴いている。

だから、すみれに会えていない。


(丁度良かったと言えば、そうなんだけど…)


すみれと少し、距離を置こうと思っていたところだったから。

俺の不注意で、すみれに近づきすぎてしまった。
いずれ、離ればなれになることはわかっているのだから、余計な傷を残すようなことはしたくない。

だから、すみれとは距離を置こうと思った。そんなことを思った直後、異国の地で新たな仕事ーーーログ《記録》が舞い込んできた。


そして今、物理的に距離を置くことになった。このログは一次的なもので、終われば再びすみれに会える。


(すみれに、会いたいさ…)


“すみれと距離を置かなければ”と思っていたのに、このログが一次的なものである事への安堵の方が、今の俺には遥かに勝っていた。

すみれと、まだ一緒に居られる。
いつか訪れる“別れ”については、今は考えたくない。


(すみれに、会いてぇ)


すみれはいつも、俺を待っていてくれる。
だから、“すみれは俺に依存してる”って思ってた。

だけど、違う。
本当に依存してたのは、俺の方だった。


ーーーーーホント、情けないさ。


俺は風が冷たいフリをして、マントを目深に被った。



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