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49番目のあなた【D.Gray-man】

第11章  Xmasと、おめでとう《番外編》



秋を一番に感じた金木犀の香りは、いつの間にか消え。

楽しみだったハロウィンが終わると、あっという間に冬が来る。



11月半ばにもなれば、外を出歩く人々はコートを着込み、マフラーや手袋を身に着ける。ほぅ…っと、空に向かって息を吐出せば、白い煙となって消えていく。

欧米の冬は、刺すように寒い。



「…寒いなあ」

それでも私は、書庫室の扉を大きく開ける。彼がいつ来てもいいように。
いつもと変わらず、ティーセットとお茶菓子を準備して。

なのに、


「全然、来なくなっちゃったなあ…ディック」


ハロウィンの日に一緒に出掛けてから、なかなか…というより、ほとんどディックに会えていない。

(私、避けられてる…?)

いや、そんなことない!
ないはずだ……多分。

…もしかして、“アレ”が会いに来ない原因?


「ッ」

すみれは独り、頬を染める。
ハロウィンの日、ディックに抱き締められた事を思い出す。

(…なんだか、いつもと違ったんだよね)

机の上に辞書や本を放り出し、すみれは頭を抱え込む様にうつ伏せになる。
駄目だ、少しも本の内容が頭に入ってこない。

(なんていうか、その…)


そう、色気。
ディックに、すごい色気があった気がする


ディックは人との距離感が近いし、スキンシップも多い。だから、普通に手を繫ごうと差し出してくれるし、背後からタックルのように抱きついてくることもある。

でも、あの時の抱擁はいつもと違った。


すごく大切なモノを扱うかのように、かつ、情熱的で。気持ちを高ぶらせ、煽られ、身体が疼き、心底からーーーー

ディックを、欲しがった私がいた。


ディックの顔が私の首筋に、ディックの指が私の腰に。
触れられた事を思い出すと、体中が火照る。もう身体がこんな反応を示してしまったら、認めざるを得ない。

ディックが、好き
それも、とってもいやらしい意味で。


(ディックに、もっと触ってほしかったな…)


ディックを好きだと感じたのは、初めてではない。しかし、こうも強く求めたことはなかった。


(こんな風に思っているのは、きっと私だけかもしれないけれど…)


悲しいことに、ディックはどんな気持ちなのか、全くわからない。


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