第1章 海賊王カラ松と奴隷市
「船長!陸が見えましたジョー!」
マストの上でハタ坊が望遠鏡を覗きながら指をさして方向を示す。
「よし!そのまま進め!」
「ダヨーン!」
医務室からはデカパンが出てきた。
「街についたら薬を買いたいダス」
「ああ、俺も情報収集したいからな」
「…また酒場ダスか」
「悪くはないだろう?酒も飲めて飯も食えて、その上情報も手に入る」
「おいらも食材を買いに行きますぜ、バーロー!」
やがて港に着き、先に降りた船員が船をロープで固定させる。
「お前たち。ちゃぁんと情報を手にいれて帰ってくるんだぜ?手ぶらで帰ったら、食事抜きだからな」
「アイアイサー!」
「いつも言うが、軍に捕まったら自分で何とかしろ。時刻の期限は今日の夜10時までだ。いいな?」
「アイアイサー!」
「よし、行け」
船員がそれぞれの場所へ散っていった。チビ太は食材の買い出し、でダヨーンとハタ坊はその荷物持ち、デカパンは薬や包帯などの調達に。一人になったカラ松は酒場へと向かった。
カランカラン ドアベルがカラ松の来訪を知らせる。中ではすでに数人の男たちがいて、カラ松を珍しそうに見ている。そんな視線には目もくれずカウンターに腰かける。
「この店で一番高い酒を頼む」
すると一人の初老の男が千鳥足でカラ松に近づいてきた。
「へっへっへ。兄ちゃん、随分景気がいいじゃねぇか。俺にもご馳走してくれよ」
「んー?ただで飲ませる訳にはいかないぜ、この街の情報と引き換えだ」
「おごってくれるならな」
「いいだろう」
男はカラ松の隣に座ると耳打ちするように話し始めた。
「じつはな、人気のない路地裏で奴隷市が開かれてるんだ」
「この街もか…」
店主も話に加わってきた。
「年頃の女を奴隷として売りに出してるんだ。その大半が誘拐された庶民の女だって話だが買いに来るのが貴族だから、軍も知らんぷりを決め込んでやがる」
「その路地裏ってのがどこか、分かるか?」
すると店主と男は周りをキョロキョロし始めた。
「俺たちがしゃべったことは内緒にしてくれよ?」
「約束しよう」
店主が出した酒を飲みながら応えるカラ松。
「大体この辺りだ」
小さな紙に地図を書いて寄越した男に小さく礼を言って後ろを向き、大きな声で言った。
「今ここにいる奴らは幸運だぞ!俺が来たことに感謝しろ!」