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鏡の中から

第9章 始まり




父 礼二は「夏海、父さんに花嫁衣装を見せてはくれないのか?」と問い質した

「父さん…」

「たった一人の…娘なんだよ?
お転婆なお前をもらってくれると言う、危篤な人物も現れた事だし…
母になる前に…見せておくれ」

それが………父の願いだよ…

礼二は夏海に告げた

「じゃあ、お婆様に渡したお金を今の価値で引き換えて、花嫁衣装を買って貰わなきゃね」

「そうじゃのぉ…お前が着ても綺麗に見える服を買ってやろうかのぉ」ほほほほ!と

お婆様は笑った

「お婆様、頼みがあります!」

「お子の事か?」

お婆様は…見通しが着いていた

「そう。私は人なのにね…
龍の雅龍と、私との間に出来た子は…

如意宝珠の玉を持って産まれ出る…

その如意宝珠を…使いこなせる様に…頼みます…お婆様

お婆様は…子が産まれ…先が見えた時…

黄泉へ渡る、それまで一年…」

「一年あれば、下拵えは出来るじゃろ
一年あれば大儲け
やっと逝けるのぉ…我が伴侶にやっと逢える…」

お婆様は…嬉しそうに笑った



「私は、幸せだから!」

夏海はそう言い、ニカッと笑った

至極…幸せそうな笑みだった

「人生を濃縮しちったけどね!
無駄に生きる日々よりは…良い!」

そう言うと、夏海は立ち上がった

「話はそれだけ!」

そう言い、雅龍に手を伸ばした

雅龍は夏海の手を取ると、立ち上がった

雅龍は夏海を腕の中に納めると

「大切にする
誰よりも愛す
この命が滅びても…
我は夏海しか愛さない」

と、家族に思いを伝えた

そして一礼すると…夏海と共に…

応接室から…出て行った

部屋を出る時…

啜り泣く声が…聞こえた

親不孝してる…

夏海は…涙を堪えた

選んだのは自分

泣いちゃダメ…

なのに…雅龍の優しい腕が…

夏海を弱くする

「泣きたいなら…

泣いてくれ…夏海…」

雅龍は…いたたまれなかった

家族の想いも…

夏海の…想いも…

それでも、雅龍は夏海を手離したくはないのだ

手離したなら…


死んでしまう…

もう離れては…生きては行けない

夏海は…雅龍の胸の中で…



涙が尽きるまで…

泣いた




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