第9章 始まり
「雅龍、パパになるんだからね」
夏海は雅龍の涙を拭い
泣き虫は…卒業しなきゃね…と笑った
凛とした…笑みを浮かべていた
「お前と作りし子を…手離さねばならぬ…
運命なのか?」
夏海と子供を…魔界に連れ去り…
共に生きようか?
「雅龍、貴方と私との間に出来る子は…
この世に使命がある存在
この地に留まり…人として生きるが定め」
「それでも…だ!夏海…」
「総ては決められし理(ことわり)…なり
決め事は…変えられない…
私は…貴方の子を宿せる様に準備に入る
その準備に一年を要し…この世に産み落とす
貴方と…私との子供を…私は産むと決めたの」
星は…そんな私の未来を指している
「夏海…」
「雅龍…この日から…始まる
私の明日が…今日から始まるの…」
「ならば…悔いのない日々を送らねばな…」
「ええ。悔いのない日々をね」
夏海は雅龍を抱き締めた
その夜、夏海は家族全員に…
雅龍に話した、話をした
「星が…私の未来を指し示したの
だから…父さんや母さん…御兄ちゃんには
話しておかなきゃ…と想うの」
夏海は静かに…話始めた
お婆様は…
「星が…指し示したのえ?」
と、悲しみに満ちた声で問い掛けた
星詠みは…自分が見えない
自分の未来が指し示される時…
未来は変わる
「ええ。雅龍と契った晩…
星が…私の進むべき道を示したの」
「星は…何と示したんじゃ?」
「私は、二十歳の誕生日を目前に…
この世を去る定め…と出ました
高校を卒業する年に、私は子を授かる…
雅龍と、私の子供が…産まれる
お婆様は、その子を見届けた後…黄泉に渡る
高校を卒業する年まで…
後…一年しか残されてはいない…
そして…黄泉へ渡るまで…
後…二年しか…残されてはいない…」