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鏡の中から

第8章 熱




「終わりにするって?」

「………還ろうと…想っておった」

「魔界へ?」

「そうだ…」

「魔界へ還ろうとしてるのに…
私を自分のモノにしようとしたの?」

「違う…」

「私…捨てられるんだ」

「違う!」

雅龍は叫んだ

「夏海…お前が呼び出す前は…
そう想っておったのだ…
疲れていた…
愛されず…過ごすのに…疲れていた
我はもう…何も求めてはならないと思っていた…」

雅龍は夏海を抱き締め…

想いを告げる


「我は…龍だ…
人のお前と…
龍の我とでは…
時間の流れが…違う」

「そうね。私が死んでも…貴方は生きる
そして継ぎの主を得て…
貴方はその主に仕えるんでしよ?」

「夏海…我は…
もう誰にも仕える気はない…」

雅龍は…夏海から離れると

目の前の夏海の頬に…

手を伸ばした

「夏海…我は…お前を離したくはない…」

「それって、私だけ愛してくれる…って事?」

「そうだ…」

「でも、貴方は龍でしょ?
私は確実に貴方より早く死ぬわよ?」

「お主が死しても…離したくはない
黄泉まで渡って…お主の魂を捕まえるから…
魔界の片隅で…共に暮らしてはくれぬか?」

「そんな事が出来るの?」

「……出来なくとも…やる
それが出来ないのなら…
夏海が…死する時に共に我も消える
お前の魂に…我の魂を結ぶ
魂を結べば…一蓮托生…
お主の息が途絶えた瞬間…
共に…黄泉を渡り…共に消えよう…」

共に消えよう…

雅龍の想いの限りだった




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