• テキストサイズ

鏡の中から

第12章 母になる




「そして…何時か…互いの分身がいる事を…
私に変わって…教えて下さい
私と雅龍の想いも…伝えて下さい
お願いします…」

夏海は深々と頭を下げた

康太は…天を仰ぎ…

「神楽の姫は…皆…無茶な願いを押し付ける…」

言って…一筋の雫を…流した

「私は…雅龍と共に逝きます」

二人して…消えてなくなろう

龍が…人と…

共にはいられないのは解っている

ならば…この命が…消え去る時

二人して…消えてなくなろう

夏海は、心に決めていた

康太は雅龍に

「夏海の命の焔が消えた時、二人で黄泉に渡り…魔界へ行くが良い
お前の叔父の黒龍が段取りしてくれている
お前の両親や、兄弟は受け入れる準備をしている
女神は…夏海に…雅龍の分だけの寿命を与える
二人は…死しても…共に生きるが良い」

康太の最大の…プレゼントだった

「炎帝…」

雅龍は…康太を見て呟いた


「夏海と雅龍の宝を貰い受けるんだからな
それなりの…事はしてやる
お前達の果ても…お前達の子供も…
オレはちゃんと見届けてやる
この命に換えても…約束は守る!」

その言葉を受け

夏海は微笑んだ

とても嬉しそうに…微笑んだ

康太が…夏海の果てを見て…危惧していた想いが…消えて行く

夏海は選んだのだ

運命を受け入れ、その為だけに生きている事を知る

「帰りは慎一が送る」

「ありがとうございます」

「夏海 」

「はい。」

「お腹の子は元気すぎて…8ヶ月で産んでも
元気に生きる。
案ずるな、その命…何としてでも守ってやるから!」

「では、8ヶ月で産んでも安心ですね!
重くて…産み月まで我慢出来るか…心配でした!」

夏海は、そう言い笑った

「重くて…」康太は絶句した

母の慈愛に満ちた笑顔をしていた

その口で…重くて…産み月まで我慢出来るか…と来る

夏海らしくて笑った




/ 181ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp