第20章 酩酊ブーズ!【Leona】
厶、とした顔で監督生の手首を掴み、自分の首へ持っていった。
「え?」
まさか、首を撫でろということなのだろうか。
グリムもたまにだが、そのようにして甘えてくることがある。
監督生は指を伸ばし、レオナの顔色を伺いながらソッと撫でてみた。
すると「ン。」と言ってそれでいい、というような顔をした。
「レオナ先輩」
「やめるな」
「…はい」
彼女はレオナを撫でても大丈夫なのを確認し、徐々にグリムや、あるいは猫にするみたいに人差し指でレオナの首を擽る。
レオナはコテン、と黙ってしまって満足そうに監督生の手にじゃれていた。
ゴロゴロと喉の音がする。
それがとても可愛かったのだけれど、面と向かって言ったら怒られるだろうなと思った。
「先輩、明日も授業、あるんでしょう?」
「だからどうした」
「出られるんですか?あんなにお酒を飲んで」
「知らねぇな。明日のことは明日にならないとわからねぇだろ」
監督生は撫でたまま、ふふ、と笑った。
呆れ半分、彼らしい返答に微笑ましさ半分といったところである。
「ラギー先輩が心配していましたよ。来年は4年生に上がらないとでしょう。研修だってあるんだし」
「…チッ。るせぇな」
「きゃっ!」
首を撫でていた彼女の手を、掴み、
「や、」
ガブリと噛み付く。
勿論甘噛みだが。
あの尖った歯で、ガブガブと。
ザラりとした舌が当たる。これは結構痛い。
「レ、レオナせんぱ、やめて」
しかし、やめない。
無言のまま、その味を確かめるように噛んでいる。
と、同時に上目遣い気味に監督生の反応を伺って面白がっている。
彼女がイヤと言えば言うほど意地悪がしたくなる。
レオナだって男だからである。
「た。食べないで…!」